めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った 恐る恐るの不動産投資
まりお (著)
2022年5月8日更新
不動産投資というと、「ローンによる借金」「空室による損失」などのイメージから、一部の人しか成功できないと思う人も多いのではないでしょうか。不動産投資の失敗例が決して少なくないことは事実です。
しかし、多くの人が持つ「思い込み」を変えられれば、不動産投資の成功に近づくことができます。着目すべきポイントは資金調達と物件選びについてです。
この記事では、不動産投資に対するありがちな思い込みと、成功するための考え方について解説します。
本書で学べること
著者は、不動産投資で成功するためのポイントは「間違えた思い込みを捨てる」ことであると説きます。間違えた思い込みとして多いポイントの1つは「ローンを使うことに対する意識」です。
通常は「自分で買ったものは自分で代金を払う」のがルールです。しかし、不動産投資の世界で成功するためには「自分で買ったものは人に代金を払ってもらう」と考える必要があります。
ローンを利用して実行する不動産投資は、物件オーナー・銀行・入居者の3者にとってメリットのあるものです。
物件オーナーにとっては、銀行のお金で物件を買える上に収益を得られるメリットがあります。ローン返済は家賃収入を原資とするため、入居者に返済してもらっているのと同じです。
銀行にとっては、安全に「利息」という利益を得られるメリットがあります。また、入居者にとっては家賃に見合った家に住めるという点がメリットです。
なお、ローンを利用する場合でも、審査結果によっては自己資金の投下を求められることもあります。その場合であっても、自分の資産全てを不動産投資につぎ込むのは避けるべきと言えます。
まだ不動産投資をしたことがない人の中には「ローン=借金」というイメージのもと、ローンを使うのは怖いと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、不動産投資の世界では、ローンを使って物件を購入するのは一般的なことと言えます。
重要なポイントは「ローンを返済しつつ、それを上回る利益を上げること」です。ローン返済を上回る利益を出せれば、借金しながらも儲かっている状況を作る出せるため「借金が残る」という感覚を持つことはないでしょう。
不動産投資の世界では、ローンを利用して物件を購入することを「レバレッジをかける」などと言います。レバレッジとはてこの原理を表す言葉であり、少ない自己資金で金額の大きい不動産を購入する場合によく用いられる表現です。
例えば、現金5,000万円を用意して全額を1棟の物件につぎ込むのと、ローンを使いながら1棟につき800万円ずつ自己資金を投下、6棟の物件を購入するのとではリスクの大きさが異なります。
物件を1棟しか購入しないと、空室が出た場合のリスクが大きくなります。その一方で、6棟購入した場合には1棟で空室が出ても他の物件の利益でカバーできていれば問題ありません。ローンの利用に伴う物件の買い増しは、空室リスクのリスクヘッジにもなると言えます。
「不動産投資に向かない人はどんな人なのか」という疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。著者は不動産投資に向いていないのは「物事の表面しか見ない人」であると言います。
不動産投資はリスクを抑えてミドルリターンを得られる資産運用です。しかし、物件の表面しか見ないで進めようとすると、ハイリスクな資産運用に変わってしまいます。
「物事の表面しか見ていない選択」が最も発生しやすいのは、購入する物件を選ぶ時です。例えば、投資用不動産を取扱う不動産業者はセールストークとして以下のような営業をします。
「このマンションは価格2,000万円・表面利回り5%で、家賃収入からローン返済しても利益が残ります。もし空室によって赤字が出たとしても、本業の収入と損益通算できるので税金が還付されます。さらに、購入したマンションは将来的に資産として残るんです。」
まず、利回りが5%しかない物件では、ローンを返済するとほとんど利益が残りません。返済額次第で利益は変わりますが、少なくともフルローンを利用している場合などは、利益はごくわずかとなることが予測されます。
また、「赤字になっても税金還付がある」という言い方は、リスクヘッジができているようにも聞こえます。しかし、損失が出るという前提に立って投資用マンションを購入すること自体が、理にかなっているとは言えません。なお、マンション1室の運用による節税効果はわずかなものです。
さらに、将来的に資産が残ると言っても、築数十年が経過したマンションの資産価値は、新築当初と比較して大幅に下がっているのが実態です。
表面利回りは投資用不動産を見極めるためによく用いられる指標です。しかし、表面利回りとは、1年間満室稼働する想定のもと算出された家賃収入を、物件価格で割り戻しただけの数字です。
実際の賃貸運用では税金やローン返済を始めとして様々な経費が掛かるため、表面利回りだけでは実際に入ってくる利益を判断することはできません。
着目すべき指標は「自己資本収益率」です。自己資本収益率とは、物件購入時に拠出した自己資金に対していくらの利益が出るのか判断するための指標となります。自己資本収益率の計算式は以下の通りです。
年間賃料収入のうち「実際の手取り額」÷物件購入時に拠出した「自己資金額」
既に解説した通り、表面利回りの計算に用いられる家賃収入は1年間満室稼働することを前提としていますが、実際には急な退去が発生することもあります。また、木造アパートなどでは特に、家賃は年数の経過によって下がっていくのが一般的です。
つまり、中古物件の購入を検討する場合は特に、現状の入居率は何%なのか・現状の家賃設定は相場と比較して乖離していないかといったポイントを検証する必要があります。
不動産投資の初心者の方に多いのは、正確な予算を把握せずに物件情報を見てしまうことです。しかし、意味のある物件探しをするためには、以下の3点について整理してから物件情報を見ることが必要になります。
特に1点目の自己資金額と融資額について正確に把握しておくことは重要です。特に初心者の方にとっては、資金調達が不動産投資における最大のハードルとなります。資金面をクリアにすれば、購入物件のグレードやエリアの明確化が可能です。
また、資金調達の目途が立っていれば、良い物件が見つかったもののローン審査を通過できなかったために物件探しが振出しに戻るという事態を回避できます。
まとめ
不動産投資をまだしたことがない人は特に、成功するためには自らの思い込みを一旦捨てることが必要です。初心者の方にありがちな思い込みとは、ローンの利用に対する恐怖感や節税効果に対する安心感、表面利回りによる物件の判断などが挙げられます。
不動産投資は、銀行のローンを使うことで拠出した自己資金に対する利益率を最大化できる資産運用です。また、節税効果がある投資用不動産は非常に限られているのが実態であり、収入が大きい人でなければ効果も小さくなります。
そのほか、物件を探すためには、最初に資金計画を固めたうえで、表面利回りではなく自己資本収益率に基づいて判断することが重要です。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
阿部 浩二 (著)
2011年2月1日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。