マンション投資基礎知識

不動産投資は法人化したほうが良い?

不動産投資は、法人化することにより経費計上できる範囲が増え節税がしやすい等のメリットがあります。 

一方で、法人設立時の手続きが煩雑、税理士への報酬などコストがかかるというデメリットもあり、法人化を迷われる方もいらっしゃるかもしれません。 今回は不動産投資を法人化することのメリットとデメリット、法人化する場合の会社の形態、法人化するべき基準についてお伝えしていきます。 

不動産投資を法人化することのメリット・デメリット

法人化のメリット

1. 経費の範囲が広がり節税の選択肢が増える 

法人化をすることで経費として計上できる範囲が個人の場合より広くなります。 

特に人件費を計上できるのが大きなメリットで、家族を役員にして不動産経営の一部を任せることで、役員報酬・賞与(賞与は税務署への事前の届出が必要です)が会社の経費となります。 個人の場合でも、青色事業専従者給与として配偶者に給料を支払うことはできますが、税務調査においては勤務実態が厳しくチェックされ、他にお勤めしていると問題になるなど制約が厳しいのが実情です。 

家族への役員報酬の支払いは所得を分散する効果もあり、家族が給与所得控除(役員報酬から差引ける決められた経費)を受けられたり、家族全体での所得税率を低く抑えられたりと節税効果が発揮されます。 また、個人では生命保険・医療保険など複数の保険に加入していても年間12万円までしか経費として計上できませんが、法人では上限がありません。 法人向けの保険に加入することで、節税をしながらいざという時の備えをすることが可能となります。 

2. 900万円を超える所得について法人の税負担の方が軽くなる 

個人の場合は、所得(収入-経費)が大きくなればなるほど所得税率が上がる累進課税制度が適用されており、税率は所得に応じて5%から45%と大きな幅があります。 

所得が大きくなればなるほど税率の増加幅も大きくなり、「課税所得が900万円から1,800万未満は33%」「1,800万から4,000万未満は40%」「4,000万円以上では45%」と定められています。 上記の他に個人住民税10%(住民税率は一律です)がかかりますので、個人の場合、所得が増えれば増えるほど、多額の納税負担となってまいります。 

一方、法人が個人と大きく異なるのは、所得の金額に関係なく税率が固定されている点です。ですので、不動産投資額が増えるに伴い所得金額が増えたとしても、法人税は一定の水準で維持することができます。 さらに資本金1億円以下の法人については、年間800万円までの所得については税率が軽減されてもいます。 

法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税を合わせた実質的な負担率である「実効税率」は、東京都の場合、所得金額400万円以下の場合は約21.4%、400万円超から800万円以下は23.2%、800万円超の部分は約33.5%となっています。 

個人の所得のうち900万円以上の部分については所得税33%+住民税10%の合計43%となりますので、法人の実効税率の方が低くなる逆転現象が起こるため、法人化した方が有利となり、大きな節税効果が期待できることになります。 

3. 赤字を最大10年間繰り越せる 

法人で、所得が赤字になった場合、法人税はゼロとなります。 さらに、その赤字を最大10年間繰り越すことができるため、翌期以降、黒字に転換した場合でも、その赤字額に達するまでは法人税がかかることはありません。 個人の場合、赤字を繰り越せる期間は3年間に限定されていますので、法人の方が赤字額の有効活用という面でも有利となります。 

4. 資産の承継がしやすくなる 

財産は「直接所有」より「間接所有」の方が良いとよく言われます。 「直接所有」は個人が不動産を直接所有していることを言い、「間接所有」は不動産の名義は法人で、個人はその法人の株式を所有することで、個人が法人を介して不動産を間接的に所有していることを言います。 

不動産投資の出口戦略として、値上がり時に売却して資産を増やすという選択肢もあれば、当初から長期所有を目的とし、最終的には家族へその不動産を承継していきたいという選択肢もあるかと思います。実は、法人を介しての間接所有は資産の承継をスムーズにしてくれる効果があります。 例えば、生前に、不動産を残したい家族に残そうと名義変更を試みますと、登録免許税や不動産取得税などの移転コストと呼ばれるコスト負担が生じ、さらに譲渡所得税や贈与税の問題も発生するかもしれません。 これらのコストを低くするために不動産の所有権の一部だけでも名義変更しようとすれば、後々、共有問題も生じてくるかもしれません。 

法人を介しての間接所有ですと、不動産は法人名義のまま、その法人の株式を贈与していくことが検討できます。 株式の名義変更であれば当然、登録免許税や不動産取得税などの移転コストはかかりませんし、司法書士などの専門家の協力も必要ありません。 また、株式の金額は、不動産の固定資産税評価額・路線価の価格や、会社の利益が黒字か赤字か、上場企業の株価などの影響により、ある程度のコントロールが可能ですので、株価が低い時を狙って贈与することで税金の負担を軽くすることもできます。 

法人の株もその所有割合に応じて意思決定がされますので、不動産の共有問題と似たような問題が生じることもありますが、例えば意思決定は長男に任せ、次男には財産権(不動産を売却して法人を解散した時に得られるお金)を残すため、長男には議決権のある株式を、次男には議決権のない株式を渡すなど、不動産オーナーのお気持ちに沿った株式のアレンジも可能です。 

さらには、子供の数だけ法人を作って、それぞれで不動産投資を行い、最初から残しやすいかたちで投資をスタートさせる、子供たちで分ける必要がなければ合併させて一つにするなどのバリエーションが非常に豊富なことも法人化のメリットとして挙げることができます。 

5. 銀行は法人の方が審査しやすい 

個人と法人の大きな違いとして、決算書の情報量があります。個人の決算書は青色申告決算書・収支内訳書となりますが、A4用紙で4枚程度です。 一方、法人の決算書の枚数は、会社規模にもよりますが、約20ページ近くになります。 銀行が融資審査をする際に、当然ですが情報量が多い方が審査は通しやすくなります。 

また、住宅ローン担当者を除き、銀行の融資担当の方は、圧倒的に法人の決算書を見慣れておりますので、今後の不動産投資を事業としてとらえていらっしゃる方は、事業融資に慣れている銀行員を味方につけるためにも法人化のメリットがあります。 

個人の方が亡くなられた場合には、融資の対象となった不動産の次の所有者を巡って相続争いなどが起きることもあり銀行も無関係ではいられませんが、法人については代表者が亡くなられても不動産の所有権が法人にあることは変わりませんので、銀行員にとって余計なトラブルに巻き込まれるリスクが軽くなることも法人融資の安心感でもあります。 

法人化のデメリット

1. 法人設立や維持に手間と費用がかかる 

法人化によるデメリットの一つは、会社設立時の手間やコストがかかることです。 設立後も、法人の決算申告書は分量も多いため、ご自分で申告するのは難しく、税理士への報酬が発生することになります。 個人の場合は所得が赤字であれば所得税・住民税は発生しませんが、法人の場合には赤字であっても法人住民税均等割という都道府県・市区町村に対する税金が必ず発生します。資本金1,000万円以下の企業で毎年7万円です。 

2. 法人には青色申告特別控除はない 

個人の場合は、65万円や10万円の青色申告特別控除を受けることができますが、法人にはこのような特別控除制度はありません。 不動産投資の所得が青色申告特別控除額で十分節税できてしまう方は、個人のままでも結構かもしれません。 

3. 長期譲渡の場合は個人の方が税負担は軽くなる 

個人が不動産を譲渡した場合の所得は、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」があります。 所有期間5年以下の短期譲渡所得の税率は所得税が30.63%、住民税が9%、合計39.63%となり、この場合には法人税率の方が低くなるため法人の方が節税効果は高くなります。 

一方、所有期間5年超の長期譲渡の税率は、所得税が15.315%、住民税が5%、合計20.315%ですので個人の税率の方が低くなり、不動産を長期で所有する目的でありながらも、5年経ったら売却することで値上がり効果を期待されている方も、個人のままの方が良いかと思います。 

 

結論

区分マンションについては1~3部屋、投資用アパートについては1棟くらいの不動産投資を検討され、値上がりした際にはいったんそこで売却して現金化しながら、さらに次の良い物件を探して行こうといったイメージで不動産投資を考えられていらっしゃる方は、個人のままの方がよろしいかもしれません。 

一方、不動産投資を事業としてお考えで、区分マンションを5部屋以上や投資用アパートを何棟も購入したい、さらに形成した資産についてトラブルを起こすことなくお子さんなど次の世代に残してあげたい、といったイメージで不動産投資を検討されていらっしゃる方は、銀行の協力も得やすく、それでいて相続対策もとりやすい法人化を選択していただけるとよろしいかと思います。 決して節税の視点だけでなく、長期的なビジョンをお持ちいただいた上でご検討されることをお勧めいたします。 

法人化の際は「株式会社」か「合同会社」か?

法人化するとなった際に、株式会社にするか合同会社にするかで悩まれるかもしれません。 合同会社を選択される方の多くはその設立コストについて、株式会社よりも14万円程節約できることを理由にされます。 ただ、合同会社の意思決定は出資者(株式会社の株主と同じ)の過半数で行いますが、この場合の議決権は、出資額の多い少ないに関係なく、出資者一人につき一議決権になります。 

例えば、長男はしっかり者、次男はお金遣いが少し荒いといったケースの場合、不動産の管理は長男に任せるために株式の51%を長男に譲り、一方で次男の不満を抑えるために49%の株式は次男に残しながらも、長男には「私が残した財産で次男の生活の面倒も見てあげたいので、過半数を持っている〇〇(長男)が役員を選ぶ意思決定はできるから、弟を役員に指名して、家賃収入のなかからいくばくかを役員報酬として払ってあげてくれないか。ただし、弟の生活態度があまりにもひどく、今後の不動産事業に支障が出るようであれば、〇〇(長男)の意志で弟を辞任させても構わない」などといった、皆さまの意志を反映した様々なアレンジができるのが法人化のメリットでしたが、合同会社ではこのようなアレンジができなくなってしまいます。 

また、合同会社だからと言って銀行融資が受けられないことはありませんが、銀行員の方は株式会社への融資に圧倒的に慣れており、上記のように様々な注意点のある合同会社への融資については、確認事項が多くなってかえって融資審査が面倒になるという本音もあるようです。 

不動産投資の法人化を検討される方は、さらなる投資について前向きにお考えかと思いますので、銀行の融資が得られやすい株式会社の方がお勧めとなります。 

不動産投資で法人化するべき人、しなくてもいい人とは?

不動産投資における法人化のポイントは「年間所得金額」です。所得金額により税金が計算されますので、一定の所得を超える方の場合法人化を行うと税金が軽減できる可能性があります。 

まずは個人が納める所得税の税率と控除額の表を見ていきましょう。 所得税に加え一律10%の住民税が課されます。 

一方で法人化した場合の法人税等の実効税率について見ていきましょう。 

所得税は累進課税ですので、所得が高いかたの方が法人化する事で税金を節約できる事が分かります。基準となる所得は一体いくらなのでしょうか? 

サラリーマンの方が副業で行っているケースで見ていきましょう。 

サラリーマンが副業で不動産投資を行い、不動産所得が黒字の場合

サラリーマンが副業として不動産投資を行っている場合、本業の給与所得と不動産所得の合計が695万~899万円である場合、不動産所得に対する税率は所得税・住民税を合わせると33%となります。 この方が不動産投資を法人化した場合、不動産投資による利益が年400万円以下であれば法人税等の実行税率は21.4%ですので、個人に比べて納税額を約3分の1も減らすことができます。 

さらに、給与所得と不動産所得の合計が900万円以上である場合、不動産所得に対する税率は所得税・住民税を合わせると43%となります。 法人化すれば、不動産の利益に対する法人税の負担は21.4%ですので、何と納税額が個人の半分で済むことになります。 

サラリーマンが副業で不動産投資を行っている場合、「所得金額が900万円以上」である方は法人化を行うと節税効果が高くなる可能性があります。 ただし、この場合に非常に重要な点は、節税効果を「率」ではなく「額」で考えることです。 

例えば、給与所得だけで既に899万円あるサラリーマンの方が、区分マンションを一部屋購入することを検討します。 この場合、不動産所得が黒字になれば、その不動産所得に対しては所得税・住民税が43%かかる可能性があります。 ただし、その不動産所得の金額が年20万円の場合。個人で払う所得税・住民税は86,000円になり、それが法人化したなら42,000円で済むことになります。 納める税金は確かに法人の方が半分で済みますが、その差は44,000円でしかありません。 

法人化しますと法人住民税均等割が7万円最低でもかかりますし、法人の申告書作成を4万円で請けてくれる税理士も非常に限られます。 不動産投資をさらに積極的に進められ、不動産所得の金額がさらに大きくなれば法人化のメリットが出てまいりますが、部屋数は2~3くらい、5年経った頃に売却も検討、という方は個人のままの方が良いかもしれません。 

 

サラリーマンが副業で不動産投資を行い、不動産所得が赤字の場合

上記では不動産所得が黒字であるケースで計算を行いましたが、不動産所得が赤字となる場合には、確定申告の際に給与所得と不動産所得の赤字を相殺することで源泉徴収された所得税が還付されますので、赤字の金額にもよりますが法人化による節税効果は黒字の場合よりさらに小さくなるでしょう。 

キャッシュフローが赤字で資産価値が高い物件は、一見「損をしている」と思われがちですが、所得税の還付を受けながら不足するキャッシュフローを充足しつつ、将来の売却益が高くなる(5年経過後の売却益に対する税金は個人の方が負担は軽い)、相続税対策になるなどのメリットが存在しますので、法人よりも個人の方のメリットが大きそうです。 

サラリーマンが現在の個人の属性を活かして不動産投資を積極的に進めたい場合

法人化した場合に、さらに融資を受けやすくすることができるのが、個人の源泉徴収票などの個人属性が高いケースとなります。 

中小企業向けの融資について、銀行は法人と経営者個人を一体として評価しており、過去の実績が全くない新規設立法人が何千万円もの融資を銀行から受けられるのは、もちろん物件の利回り等の評価もありますが、それ以外にも銀行が経営者個人の給与年収という個人の過去の実績を融資審査の際に加点評価している証です。 

ですので、年収の高いうちに不動産投資を進めるというのは銀行の支援が非常に受けやすく、資産形成のスピードを早めますので、不動産所得も増えやすく、さらに不動産の数が増えますのでその承継問題も複雑化することから、法人化することにより毎年の所得税・住民税の負担軽減を図りながら、不動産を間接所有することによる将来の相続税の節税、合わせて争いごとを起こさせないための資産承継のスキームなど、不動産に関わる様々な課題解決を図れるという法人化のメリットを受けることができるようになります。 

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監修者プロフィール

  • 人物

    小川 進一

  • 氏名

    小川 進一

  • 保有資格

    • ・(公認)不動産コンサルティングマスター

    • ・相続対策専門士

    • ・不動産エバリュエーション専門士

    • ・宅地建物取引士

    • ・賃貸不動産経営管理士

    • ・定期借地借家プランナー

  • プロフィール

    不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
    自身も都内に複数所有している実践大家。

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