本に学ぶマンション投資

アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい

アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい

山端 康幸 (著)

2015年9月17日発行

不動産投資の規模が拡大した時に税金を減らすため法人化するというのは、不動産投資の世界ではよく聞かれるテクニックです。しかし、実際にどのくらいまで拡大したらメリットがあるのか、どんな会社を作ればいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。法人設立による税率差や不動産投資で設立する法人の仕組みなどについて解説します。

法人設立のメリット

法人化に関する最大のメリットは節税できることです。しかし、法人化によってどの程度税金が減るのか、何の税金が減るのかわかっていないという人もいるでしょう。実際に税率がどのくらい違うのかなどについて解説します。

実際にどのくらい税率が違うのか

個人事業主であっても法人であっても、入ってきた家賃収入から経費を差し引いた金額に対して課税されるという点は変わりありません。しかし、個人と法人とでは課税される税金の種類が異なります。

個人事業主として不動産投資をしている場合に課税される税金は、所得税・住民税・事業税の3種類です。法人として不動産投資をすると、法人税・法人住民税・法人事業税が課税されます。

なお、個人事業主に課税される所得税については、利益の金額によって税率が変わる累進課税制度が適用されます。所得税率は5%から最大45%までの累進課税率(2022年時点)です。一方で、法人税は法人の規模と課税額に応じて2種類しか税率が定められていません。法人税率は最大で23.2%(2022年時点)です。

実際には計上できる経費の種類などが異なるため税金の正確な比較はできませんが、課税対象額に応じた税率を個人事業主と法人とで比較すると、以下の表のようになります。

個人事業主の実効税率 課税対象額 法人の実効税率
15.6% 100万円 29.4%
15.4% 200万円 25.9%
17.2% 300万円 24.8%
21.0% 400万円 24.2%
23.8% 500万円 24.3%
25.8% 600万円 24.4%
27.2% 700万円 24.5%
28.6% 800万円 24.5%
29.7% 900万円 25.9%
31.6% 1,000万円 27.0%

 

課税対象額が小さいうちは個人事業主の方が法人よりも有利です。しかし、600万円を超えると法人の方が有利になります。単純に税率だけを比較すると、法人設立による損益分岐点は600万円です。

なお、法人を設立すると投資家は設立した法人から給与を受け取るということになり、結果的に所得税等と法人税等の両方を支払うことになります。実際の税比較は上記の表から読み取れるものよりも複雑になるため、法人設立の検討に当たっては税理士への相談が必要です。

なお、法人設立のためには費用がかかります。費用は設立する法人の形態によって異なっており、株式会社を設立する場合は概ね20万円~25万円、合同会社を設立する場合は10万円~15万円が目安です。株式会社と合同会社の違いについてはこの後に解説します。

法人は使える経費の幅が広い

個人と法人とでは税率の他にも違いがあります。代表的なのは経費計上できる幅の広さです。法人は個人事業主よりも幅広い経費を計上できます。

個人事業主の場合は「収入を得るための必要経費」として、計上する経費と入ってくる収入とを関連付ける必要があります。例えば、入居者募集のため不動産会社に支払う広告宣伝費は経費として計上できるものの、車両代や交際費など入居者募集に直結しない費用は必要経費として認められません。

また、不動産投資の節税方法としては減価償却費の計上も代表的です。減価償却費とは不動産の経年劣化による価値の減少を税務上の経費として計上できるものであり、実際の支出を伴わずに経費計上できます。

個人事業主であれば、利益の有無にかかわらず、減価償却費は物件を購入した年から減価償却期間が終了するまで必ず毎年計上することになります。

一方で、法人の場合は減価償却費の計上が任意とされているため、利益が出た年だけ減価償却費を計上し、利益が出なかった年には繰り越すことが可能です。賃貸運用の期間中において、節税の柔軟性が高いことも法人設立のメリットとなります。

株式会社と合同会社の違い

すでに解説したように、不動産投資における一般的な法人には株式会社と合同会社の2種類があるため、両者の違いについて解説します。

会社の所有者や利益の分配方法などが異なる

わかりやすく解説すると、株式会社と合同会社とでは「誰が会社を所有しているのか」が異なります。株式会社の場合は株主が会社の所有者であり、会社の経営方針などを決定するのは株主総会に出席する株主です。

一方で、合同会社の場合は株式が発行されないため株主総会がありません。合同会社の意思決定機関は社員総会であり、社員の意思によって会社の経営方針などが決まります。

株式会社の場合は大株主が大きな議決権を持っており、大株主の意向次第で会社の経営方針などが決まる点が特徴的です。しかし、合同会社の場合は社員が各々1個の議決権を持っているため、いわば社員間の多数決によって経営方針などが決まります。

利益の分配方法については、株式会社の場合は出資額に応じて株主へ分配されますが、合同会社の場合は出資額に関係なく社員間で自由に分配可能です。

そのほか、株式会社の場合は決算公告の義務を負いますが、合同会社の場合は義務がありません。また、相続については、株式会社の場合は特に取り決めをしなくても、株式が相続財産として相続人に相続されます。合同会社の場合は、相続について定款で取り決めを作ることが必要です。

総じて合同会社は株式会社と比較して自由度が高いため、小規模の法人を設立するのであれば株式会社よりも合同会社の方が適しています。

法人設立時の注意点

最後に法人設立時の注意点について解説します。不動産投資における法人を設立する際には、将来的な相続を見越しておくことが重要です。この点に関しては株式会社と合同会社とで大きな違いがありません。

株式会社の株式は現金や物件そのものなどと比較すると相続しやすい財産です。しかし、相続人が複数いる場合や、利益が蓄積して株価が上がると株式を贈与・売買する時に税金がかかります。節税の観点から考えると、1つの会社は1人の相続人に相続するのが理想的です。

そのほか、役員報酬は損金として認められる点は法人による賃貸経営のメリットです。しかし、株式会社の場合は役員報酬を定時株主総会で決めておく必要があり、次の定時株主総会まで変更できません。

1度決めた報酬額を期中で増額すると、役員報酬の一部または全部が損金として認められなくなります。そのほか、役員報酬や家族従業員への給与が職務内容や類似業種の給与と比較して極端に高額である場合は、その一部が損金として認められないため要注意です。

まとめ

不動産投資における法人化は特に税金の面でメリットが大きくなります。税率の比較による個人事業主と法人との損益分岐点は利益600万円です。また、法人には主に株式会社と合同会社の2種類があり、自由度が高いため小規模の法人には合同会社の方が適しています。

なお、損金算入可能な役員報酬などについては自由に決められますが、期中で増額すると増額分は損金算入できないほか、極端に高額な報酬を設定した場合も損金算入の範囲が限定されるため要注意です。



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山端 康幸 (著)

2015年9月17日発行

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監修者プロフィール

  • 人物

    小川 進一

  • 氏名

    小川 進一

  • 保有資格

    • ・(公認)不動産コンサルティングマスター

    • ・相続対策専門士

    • ・不動産エバリュエーション専門士

    • ・宅地建物取引士

    • ・賃貸不動産経営管理士

    • ・定期借地借家プランナー

  • プロフィール

    不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
    自身も都内に複数所有している実践大家。

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