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不動産投資と資産管理法人戦略

不動産投資と資産管理法人戦略

中元 崇 (著)

2021年5月7日発行

多くの人が持つ不動産投資にまつわる疑問として「不動産投資は法人化した方が良いのか、法人化の適切なタイミングはいつなのか」というものがあります。法人化の要否やタイミングについては、人と状況によるため画一的な答えはありません。

しかし、法人化のメリット・デメリットや法人化の具体的な手順などについて知っておくことで、投資家が自分なりに判断することもできるようになります。

この記事では、不動産投資に関する資産管理法人を設立するメリットや、法人設立までの手順などについて解説します。

税金に関する法人化のメリット

不動産投資に関連して資産管理法人を設立する最大のメリットは、個人で投資規模を拡大する場合と比較して税金を抑制できることです。個人と法人とではどの程度税負担が変わるのか、具体的な数字を用いて解説します。

個人と法人とで税率を比較

不動産投資を法人化すると、個人で規模を拡大する場合と比較して税率が下がると言われています。しかし、個人と法人とで具体的にどの程度税率が違うのか、把握できている人は少ないのではないでしょうか。

目安として、個人の所得が695万円~900万円だと所得税率は23%です。また、所得税以外にも10%の住民税が課税されるほか、運用規模が事業規模となった場合には個人事業税として5%の税金がかかります。

つまり、個人の場合だと収入が900万円までの人の場合は、合計で38%の税金が課税されることになります。

しかし、資産管理会社として多い中小法人の税率は、所得800万円以下で15%、800万円を超える場合に23.2%です。法人税以外にも法人都道府県民税や法人事業税がかかりますが、不動産投資の収益が年間で800万円以下であれば実効税率は23.17%となります。

同じ800万円という基準で税率を比較すると、法人の税率は約15%低いということになります。

もう少し細かく比較すると、例えば給与所得が500万円で不動産の運用益が100万円の場合は、個人と法人とで大きな違いはありません。しかし、不動産の運用益以外に年間4,000万円の収入がある場合は、法人税の方が246,300円少なくなります。

個人の税負担は法人よりも重い

世界的な視点で見ると、2021年時点ではアメリカを筆頭として法人税は低下傾向にあるため、日本政府としては簡単に税率引き上げできない状況にあります。

一方で、個人の税負担は年々重くなっています。例えば給与所得控除や配偶者控除に見直しが入り、基礎控除の適用範囲も縮小されました。医療福祉関連の歳出が増大している影響などにより、個人の税負担は重くなる傾向が強いと言えます。

コロナウイルス感染症拡大に伴う経済対策についても、関連する歳出が今後個人の税金に転嫁される可能性がないとは言い切れません。

法人税以外のメリット

不動産投資を法人化するメリットは、物件オーナーの税金に関連するものだけではありません。法人税以外の各ポイントについて解説します。

家族を役員にすることで所得分散を図れる

例えば同じ900万円の利益が上がっている場合に、1人で所得計上すると所得税が年間約230万円になります。しかし、例えば3人に分散して300万円ずつの収入を得た場合は、合計の所得税額は約150万円です。

同じ利益が上がっている場合でも、3人に分散すると、1人で所得計上した場合と比較して約80万円の節税になります。

経営セーフティ共済を活用可能

経営セーフティ共済とは、中小企業倒産防止共済とも呼ばれており、取引先の倒産に伴って中小企業が連鎖的に倒産することを防止する目的で制定された制度です。一種の保険のようなものですが、法人税の繰延にも使えます。

毎月最高20万円の掛金を拠出できる上に掛金は全額損金算入できます。さらに、積立後40ヶ月が経過すると、掛金を全額返戻金として受取可能です。掛金を積み立てることで法人税を抑制しつつ、万一の場合の修繕費用としても利用できます。

短期間で物件を売却しても税負担が増えない

個人で不動産投資をする場合には、物件を取得してから5年以内に物件を売却すると、売却益に対して39%の譲渡所得税が課税されます。

5年経過後に物件を売却すると税率が20%に下がるため、個人で不動産投資をする場合は、物件の売却は購入後5年目以降にするほうが賢明です。しかし、法人の場合は物件の売却益に対する税金も法人税となるため、物件の所有期間に関わらず税率は一定になります。

不動産投資は空室が多いと節税効果を合わせても赤字になることが少なくありません。空室が埋まる見込みがないのであれば、早めに物件を売却してしまう方が、赤字総額を抑制できることもあります。

個人の場合は売却時の税負担が重くなることもありますが、法人の場合は売却時の税金について気にする必要がありません。

不動産投資を法人化するために決めること

不動産投資を法人化するためには、決めなければならないことが複数あります。また、資本金や株式の発行数などには注意点もあるため、事前の把握が重要です。

法人設立時に決めること一覧

法人の設立にあたって決める必要がある内容は、以下のようなものです。

  • 会社名
  • 本社所在地
  • 事業目的
  • 資本金
  • 株式単価および設立時発行株式数
  • 発行可能な株式の総数

会社名は自由に決めて問題ありません。また、本社所在地については、不動産投資の資産管理会社の場合は投資家の自宅とすることが一般的です。ただし、自宅を本社所在地にできるのは1社までなので要注意です。複数の会社で同じ住所を本社にすることはできません。

事業目的については「不動産の賃貸及び管理」とするのが妥当です。将来的に他の事業も展開する予定がある場合は、複数の事業目的を設定できます。

ただし、他の事業目的を設定すると、金融機関から資産管理法人として認められず、融資を受けられなくなってしまう可能性もあるので要注意です。

資本金については1円以上であればいくらでも問題ないのですが、1,000万円を超えると会社設立の初年度から消費税の納税義務が発生します。一般的には100万円~300万円に設定されることが多くなっています。

株式単価と法人設立時の発行株式数については、資本金を鑑みて決定するのが妥当です。1株1万円または5万円に設定されることが多く、例えば設立時の資本金が300万円で株式単価が1万円の場合は300株を発行株式数とします。

発行可能な株式の総数については、法人を設立してから増資する場合に関係があります。増資した場合に株式総数の限度を超えてしまうと、会社の定款を変更しなくてはならないため、あらかじめ余裕を持った数に設定するのが妥当です。なお、紛失するリスクや印刷費等を鑑みて、株券は発行しないのが通例となっています。

まとめ

不動産投資を法人化するメリットとしては、主に税金関連のものが多くなっています。また、収益もしくは不動産投資以外の所得が多い人ほど、資産管理法人という形で法人を設立するほうが税務効果を拡大可能です。また、税金以外にも物件の売却時期を柔軟に選べる点で不動産投資の法人化は有効と言えます。

不動産投資の収益がある程度拡大してくると、法人の方がメリットは増えるのですが、社長が同じであっても、個人から法人への物件譲渡には税金が課税されます。最初から投資規模の拡大を目指すのであれば、法人を設立してから不動産投資を始めるのも1つの方法です。



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2021年5月7日発行

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監修者プロフィール

  • 人物

    小川 進一

  • 氏名

    小川 進一

  • 保有資格

    • ・(公認)不動産コンサルティングマスター

    • ・相続対策専門士

    • ・不動産エバリュエーション専門士

    • ・宅地建物取引士

    • ・賃貸不動産経営管理士

    • ・定期借地借家プランナー

  • プロフィール

    不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
    自身も都内に複数所有している実践大家。

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