めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った 恐る恐るの不動産投資
まりお (著)
2022年5月14日更新
不動産投資家が思い悩むポイントとして特に多いのは、大きく分けて、どんな物件を購入するべきなのか・資金調達はどのようにすればいいのかという2点ではないでしょうか。
著者はハーバード大学デザイン大学院を卒業しており、その授業の中には「不動産投資のデザイン」もあったと言います。この記事では、多くの不動産投資家が持つ2つの悩みに加え、不動産投資市場の読み解き方について著者の知識や経験に基づき解説します。
著者は大手不動産ポータルサイトに広告掲載されている物件を分析し、買い付けた物件から大きな利益を得ています。著者が物件選びの際にどういった基準で判断しているのか解説します。
著者は土地を仕入れたうえで収益物件を建設し、一棟もの物件として運用している物件も多く所有しています。
著者が狙うのは、好立地の商業地ではあるものの狭小地で価格が割安の土地や、リノベーションによって建物が生まれ変わる可能性を持った鉄筋コンクリート造の古家付き物件などです。
用地仕入れの時期には、著者は不動産ポータルサイトで1週間に約100件の情報を見ています。
狭小地や古家付きの物件などは、そのデメリットの大きさから「誰も見向きもしない物件」と言えます。このような物件は長期間不動産ポータルサイトに掲載されていることも少なくありません。
売却期間が長期化した物件は値引き交渉が通りやすい上に、狭小地の物件などは設計次第では高いキャッシュフローが出ることも多いものです。
不人気の物件というのは、そのまま活用しようとすると利益を上げる見込みがあまり立ちません。しかし、物件そのものを投資家自ら再デザインすれば、大きな収益を上げる物件に生まれ変わらせることも可能です。
不動産投資を進める上では大きな資金を要するため、銀行のローンを活用して資金調達することが重要です。ここからは資金調達のコツについて解説します。
「レバレッジ」とは「てこの原理」を指す言葉であり、不動産投資の世界では銀行のローンを利用することを意味します。ローンを使うというと、借金を抱えるというイメージからネガティブな印象を抱く人もいるかもしれません。
しかし、自己資金を抑制して優良物件を購入できれば大きな利益を上げられます。ローンを利用して大きな利益を上げるためには、表面利回りではなく実質的な利益となるキャッシュフローに着目することが必要です。
空室率が上がったとしても、ローン返済を経てなお黒字になる借入を著者は「ポジティブレバレッジ」と呼んでいます。反対に、ローン返済後のキャッシュフローが残らない・金利が上昇すると赤字に転換してしまうといった借入は「ネガティブレバレッジ」に該当します。ネガティブレバレッジはあまり利用するべきではありません。
なお、収益の向上を目指すにあたり、支払金利の抑制は大きなポイントです。しかし、金利は1.5%を下回るあたりから引き下げのインパクトが小さくなるため、銀行との長期的な付き合いを考慮すると、あまり金利引き下げにこだわらないことが重要になります。
ローンによる資金調達をスムーズに進めるためには、収益性の高い物件を購入することに加えて、銀行の担当者に好印象を与えることが必要です。
まずは狙っている物件の利益分析を行い、ローン返済後のキャッシュフローがプラスになることを確認します。特に確認すべき指標は返済比率です。返済比率とは満室時の家賃収入に対してローン返済額が占める割合のことを指します。返済比率は50%以下が理想的です。
なお、返済比率が60%を超える場合は、その投資は見送るのが無難と言えます。返済比率が60%を超えるとキャッシュフローが少なくなるうえに、築年数の経過に伴って家賃が下がった場合に赤字となる可能性が出てくるためです。
そして、新たに物件を建築する場合は以下の5点を資料化した上で、すぐに提出できるようにしておきます。
上記の情報は、いずれも銀行の審査担当者が審査を進める上で必要となる情報です。必要な情報を迅速に担当者へ提出することで、担当者へ好印象を与えられます。なお、重要なポイントは5つの資料を最低でも5つの銀行へ持ち込むことです。
2022年時点では、スルガショックを経た上にコロナによる不景気もあり、不動産投資に対する融資を厳しくする銀行も増えています。また、収益を想定する上で理想とする銀行が1行目に見つかるとも限りません。少しでも好条件のローンを利用するためには、複数の銀行へ物件を持ち込むことが重要です。
例えばアメリカでは、1970年代から住宅価格の推移を検証すると、波の大きさは時期によって違うものの約10年ごとにピークと底とを繰り返していることがわかります。
日本の金融市場や不動産市場も緩やかに引っ張られているため、似たような動きをするのが特徴的です。
日本の市場にもアメリカと同様に10年のサイクルがあるため、買い時・売り時を見定めるためには、サイクルを意識することが重要です。しかし、意識すべきサイクルはもう1つあります。それは人が持つ記憶の5年サイクルです。
2008年に発生したリーマンショックは世界の景気に影響を与え、その波は日本の不動産市場にも及びました。しかし、リーマンショックから5年が経過すると、投資家や銀行担当者が当時のことを忘れたかのように、不動産投資熱は再燃しています。そして、さらに5年が経過した2018年は、ピークが近いため不動産の高値掴みに警戒する人が増えたものです。
10年のサイクルと5年のサイクルを意識しているだけで、勝ち残るための戦略が見えてきます。
例えばリーマンショックの直後は、融資の引締めによって不動産投資の利益が出づらい時期でした。しかし、不動産価格は大きく下落していたため、当時物件を購入できた人は後に大きな利益を得ています。
一方、アベノミクスがピークを迎えていた2018年は、物件の高掴みを警戒する人が多かったものの、銀行からの融資が低金利で動いていたため、キャッシュフローを拡大できた時期でした。
不動産投資の利益を最大化するために重要なポイントは、常に運用益が出る上に売却しても利益が出る物件を保有することです。運用益が安定する物件を保有していれば、景気後退サイクルに入った場合でもローンの残債を減らせます。
物件を売却して利益を上げる計画のことを「出口戦略」と呼びます。運用中の利益については事前にシミュレーションする人が多い一方で、出口戦略を綿密に練っている人は少ないものです。
多くの投資用不動産は「収益還元法」と呼ばれる計算方法によって売却価格が決まります。収益還元法による売却価格の計算式は以下の通りです。
実質収益(NOI)÷ 期待投資利回り = 不動産評価額(売却価格の市場予測)
このシミュレーションは物件を購入する時点でしておくのが望ましいものの、実質収益が時期によって変化することもあるでしょう。状況に応じて再シミュレーションを繰り返すことが重要です。
まとめ
著者が提唱する「ハーバード式不動産投資術」の特徴は、見た目などの印象に囚われず、事実に基づく数字を重要視することです。そのほか、銀行担当者へ提出する資料をあらかじめ準備しておくなど、日頃からの心掛けもポイントと言えます。
本書は「プラスアルファ」のアルファにこだわった考え方を提唱するものであり、収益を含む不動産投資を「平均以上」とするための方法にこだわって書かれています。不動産投資の収益を最大化するためのヒントが詰まっているため、気になる方はぜひ一読してみてください。
【関連リンク】その他の本はこちらからご確認ください。
上田 真路 (著)
2021年2月17日発行
人物
氏名
小川 進一
保有資格
・(公認)不動産コンサルティングマスター
・相続対策専門士
・不動産エバリュエーション専門士
・宅地建物取引士
・賃貸不動産経営管理士
・定期借地借家プランナー
プロフィール
不動産一筋35年!成約件数述べ5,000件以上。
自身も都内に複数所有している実践大家。